町内会の行事の参加率が悪くなって
美和さんは50代のマインドブロックバスターです。
今年は町内会の班長を引き受けているので、美化運動やお祭りなどのお手伝いをしています。
最近の悩みは声かけをしても断られることが多く、町会員さんの出席率が悪いこと。
全員集まると20人以上はいるはずなのに、たいてい出てくるのは5人くらいです。
毎月の行事に人数が少ないと美和さんだけで準備や片付けをすることが多くなります。
断られるのもストレスで、美和さん自身も行きたくないなあと思ってしまいます。

次の行事は避難訓練です。毎年美和さんの班は欠席者が多い行事です。
公園に集まって消火器体験などをやっているのですが、年々参加者は減っています。
班長は班員さんのお宅へ声かけしてくださいと言われますが、お誘いしても断られてばかり。
そもそも近所付き合いのあまりない人に声をかけるなんて、それだけでストレスはMAXです。
ブロック解除をして会議に出てみたら避難訓練にアイデアが
ある日、班長さんたちが集まる町内会の会議で、避難訓練の参加率を上げるアイデア出しをすることになりました。
「班長会議かぁ、、、また美和さんの班、もうちょっと参加率上げられない?って言われたらどうしよう。
あ、そうだ!こんな時こそブロック解除しなくっちゃ。」
美和さんはふと思い立って、
出かける前に「避難訓練に誘う声かけがイヤ」をブロック解除してから出かけました。
町会会館に行くと、他の班の班長さんでママ友の佐藤さんがいました。
佐藤さんは避難訓練をもっと本番のリハーサルのようにした方が良いという意見を出しました。
彼女の家がこの町に引っ越してきたきっかけが、東日本大震災だったのです。

佐藤さんの提案は、最近地震や災害級の雨のニュースが多くなってきたので、もしも本当に避難したらを想定して、小学校の体育館をお借りして実際に避難体験してみようという企画でした。
確かに実際に避難体験をしておくと、いざという時に慌てなさそうです。
みんなが身を乗り出してきました。
「避難所体験いいね、携帯トイレの使い方とか、避難所での世帯あたりの広さとか事前に体験しておくといいかも」などアイデアがどんどん出てきました。
すると会員さんの1人が「うちの会社、非常食も扱っているんですがカタログ見ますか?」と言ってきて、すぐに会社からカタログを持ってきてくれました。
その会員さんは「どれも試食できますよ。市から支給されるカンパンやクラッカーじゃなくて、食べ比べて選んだおいしいものを町会で備蓄しておくのはどうですか?この際人気投票で選んだりして」と意見を出してくれました。

町会長さんも賛成してくれて「うちの町会もお年寄りが多くなったので、確かにカンパンより、ご飯が良いだろうね。最新の非常食の食べ比べというのはいいアイデアだね、作り方も体験しておけるしね。こういう時のための町会費じゃないかな。みんな、今年は避難所体験と非常食試食会をやってみないか?!」
みんな全会一致で賛成してくれました。今年はとても充実した避難訓練になりそうです。
懐かしい顔、新しい顔が集まって
「今回の避難訓練は小学校の体育館で避難生活体験!!しかも最新非常食を試食して、投票で町会独自で備蓄する非常食を決めます!ぜひ避難訓練にご参加ください」
というチラシができました。
美和さんはチラシを掲示板に貼ったり回覧板で回したり、
あんなにおっくうだった個別の声かけも、今回は自信を持ってできました。

気が重かったピンポンを押す時の気持ちが軽いのです。
「あれ?個別訪問の声かけ、あんなに嫌だったのに、こんなに気持ちが変わるなんて!これって、会議の前にやった「声かけがイヤ」のブロック解除の効果かも」と美和さんは思いました。
いつも断られてばかりの高齢の班員さんもチラシを見て、「最近大雨で避難したとか、ニュースが気になっていたのよ。参加してみたいわ」と言ってくれたのです。
さらに「掲示板を見ました。町会には入っていないけれど何かあれば小学校に避難はすると思うので、参加しても良いですか」と最近引っ越してきた若い家族も参加してくれました。

訓練が終わってみたら美和さんの班は13人も参加してくれました。
「声かけがんばったのね、すごいね」と他の班長さんや会長からも褒められました。
しかも参加した班員さんからは「こんなに充実しているとは思わなかった、参加して良かった」
「こないだも震度3の地震があったでしょう、避難体験ができて良かった」
「思ったより楽しかった。次の行事も参加したい」
と良い感想が聞けました。
いままであまり近所付き合いのなかった班員さんとも今回のことを通して顔
見知りになれたので、次回からの声かけがしやすくなりました。
美和さんは今回のことをきっかけに、こんなに楽しい活動ができてみんなが笑顔になるなら、どんどん気軽にブロック解除していこうと思いました。
[公認リサーチャー 鷲浦朱里]







